ホームセンターに行くと、シロアリ対策用の薬剤としてホウ酸を使用したものが販売されていることがあります。また、シロアリ対策にホウ酸団子を用いる例も見られ、ホウ酸はシロアリの駆除に効果があると思われがちです。

しかし、実際にホウ酸をシロアリ対策に用いるには様々な課題があります。ホウ酸がシロアリに作用する仕組みから、日本でのホウ酸製薬剤の取り扱い状況まで、ホウ酸をシロアリ駆除に用いるのが難しい理由をわかりやすく解説します。

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ホウ酸とは

ホウ酸は「ホウ酸塩鉱物」という鉱物から作られる成分です。化粧品や医薬品をはじめ、シロアリ対策においては木材保存剤や殺虫剤などにも広く用いられています。

ホウ酸というと日本ではゴキブリ駆除用のホウ酸団子が有名ですが、ホウ酸そのものはゴキブリ以外にもキクイムシ、アリ、あるいはシロアリまで幅広い昆虫に作用します。

ホウ酸がシロアリに作用する仕組み

ホウ酸は人体にとって安全性が高いとされる物質ですが、一方でゴキブリやシロアリのような昆虫を死に至らしめます。これは、哺乳類と昆虫の身体構造の違いを利用しているためです。

ホウ酸は人体に入っても、よほど多い量でなければ腎臓で代謝され体外に尿として排出されます。しかし、シロアリのような昆虫はそもそも腎臓を持ちません。そのため、ホウ酸が昆虫の体内に入ると体内に留まったまま排出されず、蓄積していきます。その結果、腎臓を持たないあらゆる昆虫がホウ酸を代謝できずに死滅する仕組みです。

このように、ホウ酸は人体には無害でありながら昆虫にだけ効果を発揮できるため、木材保存剤や殺虫剤の成分として活用されています。

海外のシロアリ対策では積極的に利用されている

ホウ酸は、EUやカナダ、ニュージーランドなど海外諸国を中心にシロアリ対策のため使用されています。特にアメリカのハワイでは、新築住宅のあらゆる構造材についてホウ酸を使用した防蟻処理が法律で義務づけられていることもあり、非常にポピュラーなシロアリ対策手段といってよいでしょう。

海外では日本よりも古くから、ホウ酸が防蟻処理のための木材保存剤として利用されている歴史があります。たとえばオーストラリアでは1930年代から現在に至るまで、長年ホウ酸が使われています。

しかし、これは海外と日本で住宅事情が異なることも考慮しなければなりません。例えば、海外諸国と日本ではシロアリ対策として認定されている薬剤の種類がそもそも異なります。

日本では豊富な選択肢があるシロアリ予防・駆除剤も、海外ではホウ酸を中心とした薬剤しか使用できないケースもあります。

日本では新築向けの防蟻剤に利用されることがある

海外ほどではないものの、日本でもホウ酸はシロアリ対策に利用されています。日本では、おもに新築時の防蟻剤として使用されることが多いです。また、すでに建築した後の家でも、床下断熱の追加工事を行う場合にシロアリ対策としてホウ酸による処理がされるケースもあります。

ホウ酸を使った製品の中には、日本木材保存協会から条件付き認定を受けた予防向けの薬剤があるため、そうした製品を利用して安全にシロアリの「予防」を行うことは可能です。

ホウ酸はシロアリの駆除には向いていない

シロアリに効果があり、人体にも安全とされるホウ酸ですが、すでにシロアリ被害がある場合のシロアリ駆除には向いていません。ホウ酸がシロアリ駆除に対して効果がない理由について解説します。

ホウ酸は駆除ではなく予防に使われる

ホウ酸はシロアリを予防するものであり、駆除に使われることはありません。海外でも駆除目的ではなく、主に新築時の予防として導入されています。

日本木材保存協会から認定を受けている薬剤も、あくまで木材の保存目的、つまり食害されないための薬剤として使用されています。すでに食害を受けてしまっている場合、シロアリを駆除する効果については認められていません。

特に、一般人の利用を想定した市販の薬剤の中にはシロアリ駆除をうたっているホウ酸を使用した製品もありますが、完全な駆除効果はないため注意が必要です。

たとえば、液体の薬剤は木材に散布しても中まで浸透しないため、すでに木材の中に侵入したシロアリには作用しない可能性があります。

日本しろあり対策協会では防蟻性能が確認されている

ホウ酸の効果については、シロアリ業者が加盟する「日本しろあり対策協会」でも見解が発表されています。日本しろあり対策協会ではホウ酸を使用した薬剤について、防蟻性能については認めているものの、駆除効果については確認していません。

また、ホウ酸を使用した製品の性能試験は、屋外で風雨にさらされたときの影響や湿気で溶けてしまったときの影響などを考慮せず行われています。

そのため、駆除に実用的な効果があるとは考えられないのが実状です。

ホウ酸を使用したシロアリ駆除が難しい理由

ホウ酸は、日本ではそもそもシロアリ駆除の効果があるとは認められていません。ホウ酸を利用したシロアリ対策が難しい理由について解説します。

シロアリがホウ酸を食べないと効果がない

ホウ酸による駆除が難しい理由の1つとして、シロアリがホウ酸を食べないと確実な効果が見込めない点が挙げられます。

ホウ酸がシロアリの体内に入るためには、ホウ酸が塗布された木材をシロアリが食べる必要があります。接触しただけでは十分な効果が出ません。

つまり効果が出るということは、建材がシロアリに食害されるということです。仮に駆除できたとしても建材が被害を受けてしまうため、予防や駆除の意味がありません。ホウ酸を使用するより、他の薬剤を使用した方が効果的です。

水溶性のため屋外や土の上では使用できない

ホウ酸は水溶性のため、雨に濡れる屋外では流れてしまい使用できません。

そのため、屋外や家の周囲に生息するシロアリまでは対策できない特徴があります。屋内であっても、たとえば雨漏りや水漏れがあった場合、成分が流れ出て効果がなくなってしまう可能性もあります。

また、直接雨や水に濡れなくても、地面の上に直接設置すれば湿気により成分が地中に流れ出てしまうことも考えられるでしょう。

このような特性からシロアリ対策用の薬剤としては使いにくいでしょう。

即効性がない

ホウ酸には即効性がないため、緊急性を要する駆除には不向きです。ホウ酸は、シロアリが食べてから、ある程度体内に蓄積することで効果を発揮します。蓄積するまでの間、家はずっと食害され続ける恐れもあります。

また、ホウ酸を食べたシロアリの死骸を仲間のシロアリが食べることで、仲間のシロアリも死に至る可能性がありますが、この場合も死骸を仲間が何回も食べ、ホウ酸の成分が蓄積するのを待つ必要があります。

シロアリは集団で家を食害するため、シロアリが死ぬのを待っていては被害が拡大してしまう可能性も考えられます。

日本ではイエシロアリに対する性能のみ認められている

日本しろあり対策協会では、日本国内のホウ酸製剤についてイエシロアリに対する効果のみを評価しています。そのため、日本でイエシロアリと並んで被害の多いヤマトシロアリや、外来種のアメリカカンザイシロアリなど、イエシロアリ以外に対する性能は明らかになっていません。

つまり、ホウ酸製剤を使用したとしても、仮にヤマトシロアリによる食害が起こっていた場合、必ずしも被害を防げるものではないと考えられます。

これは、予防に対しても同様です。効能が確かでない以上、ホウ酸よりも他の認定薬剤による予防や駆除を行う方が適切だといえます。

シロアリ予防・駆除は専門業者への依頼が必要

ホウ酸そのものはシロアリに有効であるものの、実際に使用して完全な予防や駆除を行うには課題が残ります。そのため、シロアリの予防や駆除を行いたいのであれば、自分で市販のホウ酸製剤を購入したり、ホウ酸団子を製作したりするのではなく専門業者へ依頼することが大切です。

専門業者へ依頼することで、次の2つのメリットがあります。

専門業者は住宅環境に合わせて薬剤を選択してくれる

専門業者であれば、住宅環境をはじめとした個人の事情に合わせて適切な薬剤を選択してくれます。また、換気や養生を徹底し、屋内に薬剤の成分が回らないようさまざまな工夫をしてから施工します。

さらに、ホウ酸が効かない可能性のある、ヤマトシロアリやアメリカカンザリシロアリなどへの対策も可能になります。

専門業者なら適切な駆除や予防が可能

専門業者に依頼することで、確実な駆除や予防が可能です。専門業者は数多くの住宅に対してシロアリ対策を施しており、それぞれの家に合った予防や駆除方法を熟知しています。また、業務用の薬剤や機材を使用するため、高い効果を見込めるのも特徴です。

専門業者であれば家の被害状況、あるいは過去の対策内容などを確認した上、より確実な予防や駆除ができます。食害が進み修繕費用が発生する前に、5年に1回を目安に専門業者に依頼し確実な対策をしていきましょう。

専門業者に依頼すれば、アフターフォローとして定期点検も受けやすくなります。

ホウ酸によるシロアリの駆除は難しいため専門業者に依頼しよう

ホウ酸は腎臓を持たないシロアリの体内に蓄積するため、海外を中心にシロアリ対策によく用いられています。しかしながら、日本ではイエシロアリに対する効果しか検証されておらず、駆除効果も認められていません。

水溶性で屋外や地面に接する部分では使用できないことや、食害しないと効果が出ず予防の意味がなくなってしまう点も問題です。

シロアリに対して確実な予防・駆除をしたいのであれば、専門業者へ依頼することが確実といえます。専門業者ならホウ酸に頼らず、人体やペットへも安全性の高い方法で施工が可能です。シロアリから確実に家を守るため、5年に1回を目処に専門業者へ相談してみましょう。

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