防蟻処理(ぼうぎしょり)とは、住宅のシロアリ被害を未然に防ぐ処理のことです。自宅に防蟻処理が必要なのか、どのような処理をするのか気になる人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では防蟻処理の内容や方法、流れなどを解説します。

また、防蟻処理をしてもシロアリが再発生する可能性もあるため、保証内容を踏まえて業者を選ぶことが大切です。防蟻処理に対応した業者選びのポイントも併せて解説するので、自宅のシロアリ対策をする際に役立ててください。

すでにシロアリが発生してしまっている場合の駆除の費用や業者選びについては以下のサイトで解説しています。
シロアリ駆除は自分でできる?プロの駆除費用の相場は?料金が安すぎるとリスクが高まる理由 | シロアリの雨宮のコラム

シロアリ予防工事乗換えキャンペーン

防蟻処理とは

防蟻処理(ぼうぎしょり)とはシロアリ被害を予防するために、住宅の土台や柱などに専用薬剤を散布または塗布することです。

薬剤のほかに、防蟻または防湿加工が施されたシートや除湿剤を床下に設置し、シロアリの侵入を防ぐ方法もあります。しかし、シートの下に湿気がたまると、高温多湿になるため、シロアリが巣を作る可能性があります。

また、防湿材は防蟻加工が施されていないため、それ自体にシロアリを予防する効果はありません。シロアリの予防効果を高めるには、専用薬剤を使用した防蟻処理が必要です。

シロアリ予防に防蟻処理は必須

住宅がシロアリ被害に遭うと耐震性能を損ない、倒壊するリスクがあります。シロアリは普段は人から見えない場所で活動しているため、気づかないうちに被害が広がっていたというケースも珍しくありません。

シロアリから家を守るためにも防蟻処理は必要です。ここでは防蟻処理をおこなう条件と建築基準法の観点から防蟻処理の必要性を解説します。

防蟻処理はシロアリがいない状態でおこなう必要がある

自宅でシロアリを見かけていない場合、防蟻処理は不要だと思われがちです。しかし、防蟻処理はシロアリがいない状態で実施し、予防することが重要になります。

防蟻処理の目的は、シロアリ予防です。そのため、すでにシロアリが発生している場合は、駆除をしてから防蟻処理をする必要があります。

木造の建物は建築基準法で防蟻処理が義務化されている

建築基準法では木造の建物に対し、地面から1メートル以内の部分に防蟻処理が義務づけられています。

※出典元:建築基準法施行令第四十九条

そのため、戸建て住宅の場合、新築時に防蟻処理を実施します。

現時点では、RC造や鉄骨造の住宅に防蟻処理は義務づけられていません。しかし、木材を使用している部分はシロアリ被害に遭う可能性があるため、定期的な防蟻処理がおすすめです。

防蟻処理の方法

防蟻処理は専門知識と技術が必要になるため、通常は業者に依頼します。業者による防蟻処理には、土壌処理と木部処理の2種類があります。

土壌処理

土壌処理は、土壌の表面または内部に専用薬剤を散布してシロアリを予防する方法です。処理方法には、面状散布・帯状散布・加圧注入の3種類があります。

散布方法 説明
面状散布 土壌の表面に薬剤を散布
帯状散布 基礎内部や束石の表面に薬剤を散布
加圧注入 土壌の内部に直接薬剤を注入

通常は、土壌の表面に薬剤を散布する面状散布が採用されます。シロアリは、基本的に地中から住宅内に侵入します。地面や地中に薬剤を散布すると防蟻層ができるため、シロアリが住宅に侵入するのを防ぐことが可能です。状況によっては、帯状散布や加圧注入が追加されるケースもあります。

木部処理

木部処理とは、建物の土台に使用されている木材の表面または内部に専用薬剤を散布し、シロアリを予防する方法です。処理方法には、吹付処理・塗布処理・穿孔注入処理・穿孔吹付処理の4種類があります。

処理方法 説明
吹付処理 噴霧器で薬剤を吹き付ける
塗布処理 木材の表面に薬剤を塗布
穿孔注入処理 専用機器で木材に穴を開けて薬剤を注入
穿孔吹付処理 専用機器で壁面に穴を開けて薬剤を吹付ける

シロアリが発生していない住宅に木部処理を施す場合、まずは塗布処理が採用されます。すでにシロアリ被害に遭っている木材や壁面がある場合は、穿孔注入処理や穿孔吹付処理を施し、シロアリを駆除します。

穿孔注入処理や穿孔吹付処理は、木材または壁面に穴を開ける必要があります。仕上げの際に穴を木栓で塞ぐため、薬剤が漏れだすことはありません。

防蟻処理をおこなうタイミング

木材住宅には防蟻処理が義務づけられているため、最初に実施するタイミングは新築時が多いでしょう。では、その次や中古住宅の場合はいつが良いのか、詳しく解説します。

なお、防蟻処理はシロアリ予防が目的なので、発生していない状態で実施しなければなりません。すでに発生しているときには、駆除した後に防蟻処理を実施する流れになります。

防蟻処理の効力は約5年

防蟻処理は、一度実施すれば効果が永久的に続くわけではありません。防蟻処理で使用されている薬剤効果は、5年程度が目安です。そのため、防蟻処理をおこなうタイミングは5年に一度を目途にしましょう。

薬剤の効果が5年程度である理由は、人体や環境への影響が関係しています。従来は、5年以上効果が持続する薬剤も使用されていました。しかし、土壌汚染や蓄積性が問題になったため、現在では人体や環境に優しい薬剤に切り替えられています。

公益財団法人日本しろあり対策協会では、環境に負荷がかからない薬剤を認定しています。協会が認定した薬剤であれば、安全性に問題はないので安心です。

防蟻処理の流れ

ここからは、防蟻処理を業者に依頼するところから終了するまでの流れを解説します。

防蟻処理前の流れ

防蟻処理は、専門業者に実施してもらう必要があります。同じ処理方法でも業者によって費用やアフターサービスなどは異なるため、複数社に見積もりを依頼して比較しましょう。

①業者へ問い合わせ

防蟻処理に対応した専門業者を探し、見積もりを依頼しましょう。住宅メーカーやホームセンターでも、防蟻処理を実施しているケースもあります。ただし、防蟻処理には専門知識と高い技術を要するため、実績が豊富な専門業者への依頼がおすすめです。

②説明や見積もり・日程調整など

防蟻処理の見積りは、実際の現場を確認しないと出せません。そのため、問合せ後は、業者が自宅を訪問して状況を確認します。訪問当日は、作業内容や所要時間などの説明もおこなわれます。

疑問や不安がある場合は、このときに聞いて解消しておきましょう。見積もりや内容を確認し、納得できれば防蟻処理の実施日程を調整します。

防蟻処理当日の流れ

防蟻処理の当日は室内の養生からスタートし、防蟻処理作業、養生をはずして終了です。

①部屋の養生

当日は専用機器や薬剤の搬入でスタッフが行き来するため、傷・汚れ防止を目的に通る場所周辺を養生します。

②床下や木材に薬剤を散布

養生の後はスタッフが床下に入り、地面や柱などに薬剤を散布します。住宅の床下はすべてつながっているわけではないため、場所を移動しながら作業します。

作業例)床下の空間がない場所は床上から薬剤を入れる(穿孔吹付処理)

薬剤が浸透しにくい部分には、専用機器で穴を開けて薬剤を注入します。住宅の床下は空間自体がない場所もあれば、人が入れない構造になっている場所もあります。玄関は床下空間がないため、タイルの目地に専用機器で穴を開けて床上から薬剤を注入します。

③養生をはずす

すべての作業が終了したら、室内の養生をはずして防蟻処理は完了です。

防蟻処理にかかる費用

防蟻処理の費用は、1平米あたり1,320円(税込)~2,475円(税込)が相場です。戸建て住宅の面積は、全国平均で101.1平米程度です。この場合、防蟻処理に13万3,452円(税込)~25万222円(税込)程度の費用がかかります。

防蟻処理対策の業者選びのポイント

防蟻処理に対応した業者は数多いため、複数社を比較するといいでましょう。業者を選ぶ際のポイントは、日本しろあり対策協会への加盟の有無、修理費用保証の有無などです。

また、実施後に追加料金が発生する可能性もあるため、見積もり時にはきちんと説明してくれるかもチェックすることが大切です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

日本しろあり対策協会に加盟しているか

公益社団法人日本しろあり対策協会は、国土交通大臣の許可を得ている日本で唯一の業界団体です。協会では、防蟻処理やシロアリ駆除に使用する薬剤の認定や技術者の登録・検定などをおこなっています。

協会には会員制度があり、しろあり防除施工士の資格取得者がいる業者でなければ加盟できない仕組みになっています。

しろあり防除施工士とは、防除施工に必要な専門知識を有し、標準書に沿って安全かつ確実な施工がおこなえる技術者を認定する資格です。協会に加盟している業者には施工士が在籍しているため、安心して作業を任せられます。

協会では、公式サイトで加盟業者の名簿を公開しています。詳細エリアは都道府県で絞り込めるため、お住まいの地域の加盟業者をチェックしてみましょう。

豊富な実績や修理費用保証があるか

実績が豊富な業者は、予防や駆除に関するノウハウを蓄積しています。さまざまなケースに対応できる可能性が高いため、十分な対応が期待できます。そのため、防蟻処理やシロアリ駆除を依頼する際には、実績をチェックしておきましょう。業者の実績は、公式サイトや折り込みチラシなどで確認できます。

また、駆除してもシロアリが再発生するリスクもあるため、施工後の保証についても確認しておきましょう。通常の保証内容は、施工保証と被害再発時の修理費用保証です。

施工保証は施工後にシロアリが再発生した場合、保証期間内であれば再施工してもらえる保証です。被害発生時の修理費用保証は、保証期間内にシロアリ被害にあい、建物の修理が必要になったときの費用を負担してもらえる保証です。

被害発生時の修理費用保証に対応していない業者もあるため、事前に確認しておくようにしましょう。

アフターサービスまで一貫でおこなっているか

施工保証や被害発生時の修理費用保証がある業者でも、安心できない可能性があります。業者によっては、保証の対応を専門性の低い業者に任せたり、ほかの業者に任せきりにしたりするケースもあります。

保証の対応を他社に依頼するケースでは、満足のいくサービスが提供されないかもしれません。防蟻処理やシロアリ駆除には5年間の保証があるため、依頼から施工後の保証までをトータルでサポートしてくれる業者を選びましょう。

使用する薬剤や作業内容をしっかり説明してくれるか

防蟻処理やシロアリ駆除には専門知識が必要になるため、素人では理解できない内容も多いのが現状です。業者を選ぶ際には使用する薬剤や作業内容などに関し、丁寧に説明してくれるかをチェックしましょう。

不安や疑問があればその場で質問し、納得のいく答えが得られるかも重業なポイントになります。スタッフの教育をきちんとできている業者であれば、依頼者の立場に立ってきちんと説明してくれるでしょう。

まとめ

木造住宅には防蟻処理が義務づけられているため、新築時には予防ができている状態です。しかし、防蟻処理に使用する薬剤の効果は長期間続くわけではありません。中古住宅の場合も含め、5年に一度のタイミングで防蟻処理を実施し、防蟻効果を高めることが大切です。

また、防蟻処理はシロアリが発生していない状態で実施する必要があります。すでに発生している場合は駆除した後に、防蟻処理を実施する流れになります。気づかないうちにシロアリが発生している可能性もあるため、心配なときは専門業者に相談してみるといいでしょう。

シロアリ予防工事乗換えキャンペーン